治療院経営をしていると、
「月商300万円を達成しました」
「新規患者さんが月30人来ました」
「売上が100万円から200万円になりました」
といった数字を目にすることがあります。
もちろん、売上が増えることも、新規患者さんが増えることも大切です。
しかし、治療院を長く経営していくうえで、私がもっと大切だと考えている数字があります。
それが「最終的にいくら利益が残っているのか」です。
売上が増えたからといって、同じだけ手元に残るお金が増えているとは限りません。
今回は、1人治療院を想定しながら、売上と利益の考え方、固定費・変動費の見直し、新規集客やリピートをどのように数字で判断すればいいのかについてお話しします。
売上が多い=経営がうまくいっている、ではない
以前、私が働いていた会社では、年間約1億5,000万円の売上がありました。
「これだけ売上があります」と聞けば、かなり順調な会社に見えると思います。
ところが、実際に中身を見ると約100万円の赤字でした。
人件費や販促費、そのほかの事業にかかる経費など、当然ながら売上をつくるためにはさまざまなお金が出ていきます。
つまり、「売上=残るお金」ではありません。
これは大きな会社だけの話ではなく、1人で治療院を経営している場合も同じです。
たとえば、
年間売上3,000万円・利益▲500万円
年間売上1,500万円・利益500万円
という2つの治療院があったとします。
売上だけなら3,000万円の治療院の方が大きいですが、経営の中身を見るためには、その売上をつくるためにいくら使い、最終的にいくら残ったのかまで確認しなければ分かりません。
だからこそ私は、月商や年商だけではなく、利益までセットで見ることが重要だと考えています。
「売上が50万円増えた」の中身を見る
以前、経営セミナーで知り合った先生で、月商が約250万円から約300万円に増えた方がいました。
数字だけを見ると、「月商が50万円増えた」ので、かなり良くなったように見えます。
しかし、そのために、
- コンサルティング費用:月10万円
- 広告費の増加:月20万円
合計30万円ほど経費が増えていました。
つまり、売上は50万円増えていますが、単純に考えると増えた売上50万円に対して追加経費が30万円かかっています。
見るべきなのは「50万円売上が増えた」という部分だけではありません。
その50万円をつくるためにいくら使い、結果としていくら残ったのか。
ここまで考える必要があります。
利益を増やす前に、まず「現状把握」をする
では、どうすれば利益を残せるのでしょうか。
私が最初にやってほしいと思っているのは、売上を増やすことではありません。
まず現状を把握することです。
少し面倒ですが、ここを飛ばしてはいけません。
最初に「固定費」と「変動費」をすべて出してみてください。
固定費
毎月ある程度決まって発生する費用です。
- 家賃
- 仕事で使用している携帯電話
- 保険
- 毎月契約しているサービス
- 法人の場合の役員報酬
変動費
月によって金額が変わるものです。
- 広告費
- 光熱費
- 雑費
- パートスタッフなどの人件費
- 物販をしている場合の仕入れ
細かな分類にこだわりすぎる必要はありません。
まず重要なのは、「毎月、何にいくら使っているのか」を把握することです。
自分の給料も分けて考える
ここで忘れてほしくないのが、自分自身の給料です。
1人治療院の場合、院のお金と自分のお金の感覚が曖昧になっているケースがあります。
そこで、「自分はいくら必要なのか」も分けて考えてみてください。
たとえば、
売上:100万円
経費:80万円
その経費の中に自分の給料:30万円
だったとします。
この場合、自分の給料30万円を確保したうえで、20万円が残るという見方ができます。
まずはこのように、
売上 − 必要な支出 = どれだけ残っているのか
を把握します。
利益を増やす方法は大きく2つ
現状が分かったら、次に考えることはシンプルです。
利益を増やすには大きく、
- 経費を減らす
- 売上を増やす
という2つの方向があります。
ここで重要なのは、いきなり「もっと新規を集めよう」と考えないことです。
もしかすると、新規患者さんを増やさなくても、不要な支出を見直すだけで利益を残せるかもしれないからです。
実際にあった「技術セミナー代」の例
以前、月商80〜100万円ほどの1人治療院の先生から、
「全然お金が残らない」
という相談を受けたことがあります。
非常に勉強熱心な先生で、技術の勉強にも継続的に取り組まれていました。
そこで支出を細かく確認していくと、技術セミナーに毎月約12万円。
さらに交通費が約8万円かかっていました。
合計すると、毎月約20万円です。
技術を学ぶこと自体が悪いわけではありません。
私自身、治療家として技術の勉強は非常に大切だと思っています。
ただ、その先生の場合は3つのセミナーに参加しており、ご本人も「何のためにそれぞれのセミナーに行っているのか」が少し曖昧になっていました。
そこで、
「一番必要だと思うものを1つ残して、まず経営を立て直しましょう」
とお話ししました。
結果として、技術の勉強をやめたのではなく、学ぶものを1つに集中させることで、セミナー代と交通費を抑えることができました。
ここで大切なのは、「経費を削る=何でもやめる」ではないということです。
経費を削れないなら、次は売上を見る
固定費・変動費を確認して、「これ以上削るものはない」となったら、次は売上を増やす方法を考えます。
しかし、ここでもいきなり広告費を増やすのではありません。
まず「なぜ売上が上がらないのか」を確認します。
治療院であれば大きく、
- 新規患者さんが足りない
- リピートがうまくいっていない
などの可能性があります。
ここでも感覚ではなく、数字で確認します。
新規集客はCPAまで確認する
私がコンサルティングなどで確認するものの一つが、過去半年間の新規患者数と広告費です。
たとえば、
毎月の新規患者数:10人
半年間:60人
広告費:毎月6万円
半年間:36万円
だったとします。
この場合、
36万円 ÷ 60人 = 6,000円
なので、新規患者さん1人を獲得するためにかかった広告費は6,000円です。
一般的にCPAと呼ばれる数字です。
「広告費を6万円使っている」だけでは良いのか悪いのか判断できません。
その結果として何人来院し、1人あたりいくらかかっているのか。
ここまで確認して初めて、広告の状態を見ることができます。
「新規が足りない」と思っていたら、問題はリピートだった
実際に、新規患者さんが足りないと思っていた先生の数字を詳しく確認したことがあります。
半年間で新規患者さんが60人来院していました。
ところが、その後の経過を見ると、1〜4回目までの段階で約6割の方が来院しなくなっていました。
60人のうち36人が離れ、5回目以降まで続いていたのは24人です。
この状態で新規集客だけを増やしても、入ってきた患者さんが次々と離れてしまいます。
つまり、このケースのボトルネックは新規集客ではなく、リピートの部分にありました。
その先生はその後、約2年間取り組みを続け、もともと月商80〜100万円ほどだったところから、約140万円、良い月では160万円ほどになりました。
回数券やサブスクリプションを導入したわけではありません。
1回9,800円の施術を基本として、数字を確認しながら問題になっている部分を一つずつ改善していきました。
「もっと新規を増やす」が答えとは限らない
治療院の売上が伸びないと、「新規をもっと増やさないと」と考えてしまいがちです。
しかし実際には、
- 新規が足りないのか?
- リピートに問題があるのか?
- 経費を使いすぎているのか?
- そもそも現在の売上規模が小さすぎるのか?
によって、やるべきことはまったく違います。
だからこそ、数字を出すことが重要です。
数字を出せば、自分の治療院のボトルネックが見えてきます。
売上を追い続ける経営から、利益を残す経営へ
私は売上を上げること自体を否定しているわけではありません。
新規患者さんを増やすことも必要です。
広告が必要な時期もあります。
技術に投資することも大切です。
ただし、それらはすべて最終的に、
治療院を安定して経営し、自分が治療に集中できる環境をつくるための手段
だと思っています。
月商300万円という数字をつくるために、毎月多額の広告費やコンサルティング費用が必要なのであれば、その中身まで確認する。
反対に、月商がそれほど大きくなくても、必要な給料を確保し、利益が残り、無理なく経営を続けられているのであれば、その状態にも意味があります。
見るべきなのは、表面的な売上だけではありません。
「その売上をつくるためにいくら使い、最終的にいくら残っているのか」
ここまでを一つの数字として考えることが大切です。
まずはこの数字を出してみてください
利益を増やしたいのであれば、最初から新しいことを始める必要はありません。
まず一度、自分の治療院について、次の数字を確認してみてください。
- 売上
- 固定費
- 変動費
- 自分の給料
- 最終的に残る金額
- 過去半年間の新規患者数
- 過去半年間の広告費
- 新規患者1人あたりの獲得費用(CPA)
- 1回目からその後の来院状況
ここまで出すだけでも、
「広告を増やすべきなのか」
「経費を見直すべきなのか」
「リピートを見直すべきなのか」
がかなり見えやすくなります。
経営改善は、何か新しいノウハウを取り入れることから始まるとは限りません。
まず自分の治療院が今どうなっているのかを正確に把握する。
私はここがスタートだと考えています。
治療に集中できる経営をつくるために
私自身、治療家がお金だけにとらわれることなく、患者さんを無理に縛りつけることもなく、治療に集中できる環境をつくることを目指しています。
そのためには治療技術だけではなく、新規集客、リピート、利益、そして資産形成など、治療院経営全体を整えていく必要があります。
売上を大きくすることだけが経営の目的ではありません。
必要な利益をきちんと残しながら、自分が好きな治療を続けられる経営をつくる。
そのためにも、まずは一度、自院の数字を整理してみてください。
あなたの治療院は、今どこに課題がありますか?
ここまでお話ししたように、治療院経営では、ただ売上を増やせばいいわけではありません。
新規集客が足りないのか。
リピートに課題があるのか。
利益が残っていないのか。
それとも、別の部分を見直す必要があるのか。
大切なのは、いきなり何かを始めることではなく、まず自分の治療院の現在地を知ることです。
そこで、自院の経営状態を整理するための「治療院経営 無料診断」を用意しています。
いくつかの質問に答えることで、自分の治療院で今どこを見直すべきなのかを確認できます。
「何から手をつければいいのか分からない」という方は、まず一度チェックしてみてください。






